2024/03/09 09:08


スペンサートリックスです。


私がクロースアップやパーラー形式のマジックにおいて常に心掛けていることがあり、それは


「いつの間にか落ちていること」


つまりは、「日常」と「非日常」の境目が曖昧で、気づけば「ほぼ魔法の世界」にいるというようなさりげない演出です。


そこにおいて必要なことは、まずは自然な道具、そして自然なパター(導入のセリフ)です。



また、数年前から創作において重視していることが「マジックSDGs」、つまりは演じ続けるための障壁が少ないことです。


端的な例では、高価なリフィルが必要だったり、ギミックがデリケートだったりすると、無意識のうちに気づけば演じなくなっていたりします。



ギミックの破損を気にせずガンガン演じられて、リフィルは思い立ったらすぐに近場で入手可能というのが、私が定義する「マジックSDGs」です。


ここを成立させることによって、演じ続けるストレスを最小限にして、優れた演目を長く演じ続けることができます。



それらの点でこの上なく重宝している作品が『シュレーディンガー』です。



現象は「ペットボトルのキャップをペンやストローが貫通する」というものですが、従来のように高価なギミックに気を使う必要性もなく、さらにはペーパーナプキンやハガキなどで覆わなくても見せることが可能です。


空のペットボトルとキャップを相手によく調べてもらったあと、ペットボトルにキャップをして、密室状態にします。


底面や上部をあらためて、どこにも穴など開いていないことを確認してから、ペンやストローの先をキャップの上から押しつけると、溶けるようにゆっくり中に貫通していきます。下から見るとキャップを通り抜けた物体がボトルの内側に通り抜けてくるのが確認できます。


そのままゆっくり押し込んでいくと、物体はカランと音を立ててボトルの中に入ってしまいます。


演者はそのままボトル上部のキャップを見せて穴がないことを確認し、キャップを外してボトルを傾け、中に入った物体を出して見せた後、すべての道具を改めさせますが、やはりどこにも怪しいところは見当たりません。



ギミックは好きなペットボトルキャップを使って、慣れてしまえば5分もあれば自作可能です(私は一度に数種類一気に作成してしまいます)。


今までにない新しい原理が超実用的で、とにかくカジュアルに演じ続けられ、それでいて超ビジュアルで不思議な『シュレーディンガー』、もしもまだお持ちでない方は、今すぐ手に入れて末長く使い続けてください!



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